古書の町である神保町は、ある意味全ての文化の発展の地とも言えます。
クラシック出身のプロトレーナーが集まるワンボイスミュージックスクールが、この神保町を発信地にしたのもそんな背景を重視したところもあるのですが、今日は神保町が日本のクラシック文化を支えてきた情報と、これからの若い世代にとって『発声』がロストテクノロジーにならない為の提案をいたします。
① 音楽古書と楽譜文化の萌芽
大正〜昭和初期:洋楽文化が浸透。音楽書籍、楽譜の需要が高まる。
学生街であり、教養としてのクラシック音楽が大学生・知識層に親しまれる。
主な店舗
音楽之友社(1930年創業)
神保町に本社を構え、音楽書籍、雑誌『音楽の友』の発行開始。
戦後、日本のクラシック普及の中心的存在に。
輸入楽譜も扱い、日本のクラシック界を牽引。
美学書房(後年移転)
戦後しばらく音楽専門の古書も扱っていた。
② レコード文化の台頭
1950年代後半〜1960年代にかけて、日本でLPレコードが本格的に普及。
音楽愛好家・学生をターゲットにしたレコード店が増加。
主な店舗
ヤマハ神保町店(※1960年代頃、音楽書・楽譜を扱っていた)
クラシック専門レコード店
詳細な記録は散逸しているが、小規模なクラシック専門中古店が点在していた。
③ 中古市場の拡大と神保町のクラシック聖地化
CD時代の到来(1980年代中盤〜)により、LPからCDへの移行が進む。
一方で、クラシックファンの間では「アナログ盤(LP)」人気が根強く残る。
神保町が「中古クラシックCD・LPの聖地」として定着していく時期。
主な店舗
ディスクユニオン 神保町店(クラシック専門フロア)
1990年代にクラシック館として独立フロア化。
LP、CD、SACDなど希少盤が揃い、国内最大級規模に成長。
「国内盤初出」「DECCA」「EMI」「PHILIPS」など、名門レーベル盤も豊富に揃う。
海外からのクラシック・マニアも多数訪れる。
美学書房
この頃は音楽系古書・思想書・芸術書を扱っており、クラシック音楽理論書・評論なども豊富。
④ 神保町周辺のクラシック喫茶文化
神保町は古書の街・学生街として発展してきたことから、「知的な音楽鑑賞の場」としてのクラシック喫茶文化が根付きました。
クラシック音楽喫茶とは、大音量で高級オーディオによる音楽鑑賞をしながら、読書や思索をする場という性格を持ち、レコード文化の普及と共に昭和中期から増えました。
特に神保町は、本とクラシックが結びついた空間として、知識人・学生に愛されてきました。
神保町および周辺の代表的クラシック喫茶
① ミロンガ・ヌオーバ(Milonga Nueva)
場所:神保町駅徒歩2〜3分
創業:1953年(神保町でもっとも有名な音楽喫茶の一つ)
特徴:
元々はアルゼンチンタンゴ喫茶としてスタートしましたが、クラシックも多くかかる。
クラシック音楽とタンゴが融合する独特の空間。
アンティーク家具、レトロな内装が残り、文学者や音楽ファンの交流の場でもあった。
ジャン・コクトーやヘミングウェイのファンにも人気。
現在も営業しており、神保町の文化的な象徴のひとつ。
② 想い出のクラシック喫茶「ミュージック喫茶 カワセミ」(閉店)
神保町の近隣には有名クラシック喫茶がいくつも存在していたが、時代の流れとともに閉店する店も多くなりました。
神保町エリアでクラシックレコードの音響にこだわっていた小規模喫茶。
1970〜80年代にクラシックレコード愛好家の溜まり場だった。
⑤ レア盤発掘とディープなクラシック文化の継承
音楽のデジタル化が進む中で、神保町は「物としての音楽文化(CD・LP・楽譜)」を守る場に。
特にクラシックファンにとっては、演奏家別・録音別の比較・研究のための聖地として機能。
主な店舗
ディスクユニオン 神保町クラシック館
世界的にも有名なクラシック中古専門店。
「バーンスタインの未発表録音」「カラヤン初期録音盤」などレア音源も多く取り扱う。
年に数回、クラシックレコード・CD大セールを開催。
高山本店
芸術書・音楽評論の古書が充実。クラシック音楽論の研究者に人気。
現代的なポップスなどは、言語的価値観を伝えるツールとしての側面がメインとなっていますが、クラシック音楽はメロディー自体に情景描写や感情描写の意味合いや感覚を持たせるという、今は失われつつある手法をとった「哲学的要素」を持っています。
今の若い世代に人たちがクラシックの発声を学ぶ事により、むしろ新しい価値観としてブラッシュアップされていくと信じて、ワンボイスは活動しています。
クラシック音楽にも興味のある方は、水道橋・神保町の『ワンボイス』へGO!